銀行口座の相続手続きの流れ
1 銀行口座の相続手続きの概要 2 相続人を確定する(相続人調査) 3 預貯金を含めた相続財産を把握する(相続財産調査) 4 相続人全員で分け方を決める(遺産分割協議) 5 金融機関における預貯金の解約・名義変更 6 相続手続きは専門家に相談・依頼することをおすすめします
1 銀行口座の相続手続きの概要
相続が発生した際、被相続人(亡くなられた方)の銀行口座は、通常であれば被相続人死亡の事実が金融機関に伝わった時点で凍結されます。
口座凍結とは、預金の入出金や送金などができなくなる措置のことです。
これにより不正な預金の流出を防ぐことができ、遺産分割に関するトラブルを予防するのにも役立ちます。
しかし、このままでは相続人が被相続人の預金を使うことができません。
葬儀費用や当面の生活費、相続税の支払いに使用するためには、相続手続きをする必要があります。
銀行口座の相続手続きをするためには、事前に相続人の確定や預貯金の調査、遺産分割協議などを済ませる必要があります。
銀行口座の相続手続きは、大きく分けて次のような流れで進みます。
① 相続人を確定する(相続人調査)
② 預貯金を含めた相続財産を把握する(相続財産調査)
③ 相続人全員で分け方を決める(遺産分割協議)
④ 金融機関に対して必要書類を提出し、解約払戻しや名義変更を行う
このうち相続人の確定と相続財産の調査は、遺産分割をするための前提になります。
なお、相続手続きの際に提出する書類や審査の手続きは、銀行ごとにある程度異なります。
複数の銀行に口座がある場合、念のため事前に各銀行に問い合わせ、手続きの進め方や必要書類を確認しておくことをおすすめします。
2 相続人を確定する(相続人調査)
銀行口座の解約や名義変更を含む相続手続きにおいては、まず相続人を確定しなければなりません。
法定相続人の範囲は次のとおりです。
第1順位は子、第2順位は父母などの直系尊属(子がいない場合)、第3順位は兄弟姉妹(子やその代襲相続人、および直系尊属もいない場合)
配偶者は常に相続人となり、上述の相続人とともに相続権を持ちます。
相続人を調査するためには、戸籍謄本を収集します。
基本的には、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と、相続人全員の現在の戸籍謄本を取得します。
代襲相続が発生している場合には、被代襲者の出生から死亡までの連続した戸籍謄本も取得します。
また、相続手続きにおいては、被相続人や各相続人の住民票(被相続人の場合は住民票除票)、印鑑証明書なども必要になることがありますので、一緒に取得しておくと便利です。
代襲相続や兄弟姉妹相続が発生している場合、戸籍収集に時間を要することもあるため、早めに着手することが望ましいといえます。
3 預貯金を含めた相続財産を把握する(相続財産調査)
相続人の調査と並行して、預貯金を含む相続財産の内容を調査する必要があります。
預貯金の調査は、基本的には被相続人の通帳やキャッシュカード、銀行から届く郵便物などを確認します。
近年ではネットバンキングを利用している方も多いことから、パソコンやスマートフォン、メール履歴などから銀行を特定する場合もあります。
銀行口座に関する情報が少ない場合には、メガバンクや被相続人の自宅付近にある地銀、信用金庫等に対して照会をすることも有効です。
その際、相続人であることを証明する書類(戸籍謄本など)が必要になります。
通帳がない場合には、相続開始日(被相続人がお亡くなりになられた日)時点の残高証明書を取得することで、口座に入っている金額を知ることができます。
定期預金があり、相続税申告が想定される場合には、既経過利息計算書も取得しておくとよいです。
4 相続人全員で分け方を決める(遺産分割協議)
相続人と相続財産調査が済みましたら、どの相続人がどの相続財産を取得するかを話し合います。
話し合って合意した内容は、遺産分割協議書に記します。
遺産分割は相続人全員で行う必要がありますので、遺産分割協議書には相続人全員で署名と押印をします。
実務においては、押印には実印を用い、印鑑証明書も添付します。
5 金融機関における預貯金の解約・名義変更
遺産分割協議書を作成したら、金融機関で相続手続きを行います。
手続きの流れはおおむね次のとおりです。
まず、相続開始の届出(被相続人死亡の届出)をします。
この届出をすることにより、口座が一旦凍結されます。
口座の有無や残高の照会の際に、相続開始の届出をすることもあります。
次に、相続手続きに必要な書類を提出します。
一般的には以下の書類が必要です(金融機関によって必要な書類が異なりますので、ご注意ください。)。
① 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
② 相続人全員の戸籍謄本
③ 遺産分割協議書・印鑑証明書
④ 金融機関所定の申込書
書類提出後は、銀行が書類を確認し、相続人に抜け漏れがないことや、書類に不備がないかを審査します。
提出した書類に問題がないと判断されれば、預金が相続人の口座に振り込まれるか、相続人名義の口座に変更されます。
6 相続手続きは専門家に相談・依頼することをおすすめします
銀行口座の相続手続きは、単に被相続人の預金を引き出したいと伝えるだけでは進めることはできません。
上記の各ステップを経て、初めて金融機関での解約や名義変更が可能となります。
特に相続人が多い場合や、相続財産に関する情報が少ない場合には、相続人調査、相続財産調査の負担はとても大きくなります。
専門家に相談、依頼をすることで、これらの作業を任せることができ、スムーズかつ安心して手続きを進めることができます。